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眼瞼下垂

頭痛、肩こりなど

眼瞼下垂症と頭痛、肩こりなどについて少し述べます。
 
42歳の男性です。
10年前より瞼が開けづらいとのことで受診されました。

 
目もとだけの写真ですみません。
眉毛が上がり、前額にはシワがくっきりと出ています。
 
瞼を開けるのに前頭筋をかなり使っています。腱膜性眼瞼下垂症の症状です。
 
眼瞼下垂手術では切開線が重瞼ラインとなります。
もともと一重瞼の方は眼をぱっちりとしすぎると顔の印象が大きく変わってしまいます。
 
一重瞼の方は睫毛の生え際から5~6mmの比較的低い位置で切開します。
奥二重ぐらいになるのをイメージして切開デザインします。
 
皮膚と眼輪筋も切除します。
皮膚と眼輪筋の負荷を取る事でより開眼しやすくするのです。
 
眼瞼下垂手術を執刀するたびに思います。
解剖的なバリエーションが多い、と。
 
挙筋腱膜の前転を妨げる下横走靭帯が太い一本の索状物となっている人もいれば、細く
数本に分かれている人もいます。
 
さらに言えば、一人の患者さんでも右と左で下横走靭帯の形態が異なることがあります。
この方は左眼の挙筋腱膜を前転するのに外眼角靭帯に割を入れました。
 
挙筋腱膜をスムースに前転させるのがこの手術の最大のポイントです。
眼科隔膜の眉毛側をカットするなど様々な工夫があります。
 
術後1ヶ月です。左眼は手こずったせいか、左上眼瞼がやや腫れています。
上眼瞼と眉毛の距離も縮まりすっきりとしたいい男になりましたね。
(ちなみにこの患者さんは保険診療で行いました。)

 
術後1ヶ月、患者さんの感想です(電子カルテから抜粋です)。
「眼が楽に開きます。今まで眼を開けるのにすごく力を使っていたのが分かりました。
体が楽になった。すっきりしました。たとえるならば詰まっていた鼻がすっきりした感じ。」
 
鼻詰まりがすっきりしたとは面白い感想ですね。
 
ここからが本題。
私は術後1ヶ月の時点で術前、術後の評価を行います。
この方は術前の肩こり、頭痛を10として術後の肩こりが1、頭痛が1まで低下しています。
 
頭痛、肩こりが改善する症例が多いことに驚きます。
 
しかし、しかしです。
あくまでも瞼の開けづらさに対して眼瞼下垂手術を行います。
そしてその結果としてなぜか頭痛、肩こりが改善したのです。
 
頭痛を主訴に眼瞼下垂手術を希望して受診される人もいます。それは違うと思う。
頭痛は生理学的に解明されていないことが多いはずです。
 
瞼が普通に開いている人にはまず神経内科を受診するように勧めます。
やっかいなのは代償性眼瞼下垂症という概念です。
 
瞼は普通に開いているように見えるが挙筋腱膜の外れを精一杯ミュラー筋が代償している。ミュラー筋の刺激が大きすぎるため青白核が刺激され頭痛を生じる。
 
このような方の話をじっくりと聞くと頭痛というようりは眼の奥が痛いという表現をされるのに気づきます。
 
代償性眼瞼下垂症による頭痛、眼瞼下垂症とは関係のない頭痛。
鑑別できるのか? 難しい、本当に難しいです。
 
眼瞼下垂症、本当に奥の深い疾患です・・・。

眼瞼下垂手術 -挙筋腱膜の損傷ー

コンスタントに眼瞼下垂手術をしています。
 
とても疲れるので原則として自費診療にしています。ちょっと心苦しいです。
 
41歳女性の方が来院されました。
もともと一重瞼だったそうで今までに3回の埋没手術を受けています。
 
最後の重瞼術は2年前だそうです。
 
重瞼ラインがぼやけてきたのでCMで有名な美容外科を受診したところ眼瞼下垂と診断されたようです。担当医の軽さ、眼瞼下垂手術の説明に不安を感じて当院を受診されました。
 
患者さんの希望で手術中の写真のみ掲載します。
 
重瞼ラインの修正としての挙筋腱膜前転法を行うことにしました。
眼窩隔膜を切開して挙筋腱膜を前転して驚きました。
 
右の挙筋腱膜を前転したところです。
挙筋腱膜が中央から外側でぱっくりと切られています。

 
左の挙筋腱膜を前転したところです。
こちらも切られており、挙筋腱膜が瞼板から剥がれています。

 
よくよく本人さんに確認したところ、2年前の重瞼手術の際に部分脱脂術をされたようです。
私の見立てではこの方は上眼瞼の皮下組織は決して厚くない。
 
部分脱脂をされた際に挙筋腱膜が損傷された可能性があります。ひどい状態です。
 
しかし、今までよくこの状態で眼を開けていましたね。
 
切られた挙筋腱膜を縫合します。

 
前転した挙筋腱膜をほどよい位置で瞼板に固定するのがこの手術のポイントです。
今回は難しかったです。
 
まず無事な内側の挙筋腱膜を瞼板に固定します。
縫合した挙筋腱膜を瞼板に固定すると、どうしても過矯正になってしまいました。
 
今回は損傷された挙筋腱膜は瞼板前組織に固定しました。

 
1週間後に抜糸しましたが、よい感じで眼が開き重瞼線もはっきりとしていました。
まずはヤレヤレです。
 
皮膚を切開して実際に挙筋腱膜を見ないとどういう状態になっているか分かりません。
だから、切開式重瞼術を受けたことがある患者さんの眼瞼下垂手術は注意が必要です。
 
また、挙筋腱膜および周囲の構造(下横走靭帯、外眼角靭帯など)も個人差がとても多いのです。一人ひとり時間をかけて丁寧に執刀したいですね。

信州大学式眼瞼下垂手術 -私の体験-

40歳を超えてからまぶたが重いことがあります。
 
夕方の診療がつらいですね。
 
20年以上ハードコンタクトレンズを装着していました。
おそらく私の挙筋腱膜は伸びているのでしょう。
 
私が最も信頼する眼瞼下垂手術のスペシャリスト北澤 健先生に手術をお願いしました。
大事な自分の眼瞼です。怪しげな美容外科医なんかに絶対触らせませんよ。
 
手術前日から緊張で体がこわばりました。患者さんの気持ちがよく分かりました(笑)。
 
いざ執刀。写真はいずれも私の眼瞼です。
 
右上眼瞼を切開、眼窩隔膜を切開して下横走靭帯を同定したところです。

 
左眼の下横走靭帯を同定。

 
下横走靭帯
は細目靭帯と呼ばれ、我々の祖先が凍傷から眼球を保護するために発達した構造物です。必要以上に目が開くのを抑制する機能なのです。
まぶたで健康革命 松尾 清 著より)。
 
下横走靭帯という強固な支持組織の下を挙筋腱膜という動的な組織がたえず運動します。
日常的に抵抗がかかり、その抵抗は挙筋腱膜の負担になるのでしょうか?
 
挙筋腱膜に負荷がかかると、腱膜は伸びて瞼板から外れてくるような気がします。
この周囲の話は成書に記載がなく自分なりの解釈です。
 
下横走靭帯を切り離して挙筋腱膜を前転させるのが手術のポイントです。

 
こうして改めて自分の挙筋腱膜を見るのはなんとも興味深いものです。
私の眼窩脂肪はいがいと多いですね。挙筋腱膜は思ったよりはしっかりとしている。
 
挙筋腱膜を内側中心に6-0プロリン糸で瞼板に2針固定します。

 
信州大学式眼瞼下垂手術はつまるところ眼瞼の構造を変える手術だと思います。
理にかなった手術です。だからこそ自分もこの手術を受けたのです。
 
(手術を振り返って)
手術2時間前に眼瞼にペンレステープ(麻酔テープ)を貼ります。
麻酔は30Gの細い針のせいか思ったより痛みはないです。
 
手術中に斜視鉤で下横走靭帯を同定する時など引っ張る操作が加わると何とも言えない
鈍痛があります。私はこの感覚が少しつらかったです。
 
外眼角靭帯の切開など深い部位に操作が及ぶと少し痛いので麻酔を追加してもらいました。バイポーラによる止血はやや熱い感覚を感じることがありました。
 
下横走靭帯を切離する時にプチッとした感じとともに何かが開けた感覚を得ました。
「あ~これだな」と妙に納得する自分がいました。
 
挙筋腱膜を瞼板に固定後、座った状態で左右差を確認します。
左眼外側に少し違和感があったので再固定してもらいました。
 
執刀する先生を信頼できるのならこの手術は問題なく耐えられます。
時間は60~90分くらいだったと思います。
 
私の体験談がこれから手術を受けられる方の参考になれば幸いです。
 
手術が終わって病室から眺める笠松市の夕日です。
戦い終わって日が暮れてといった感です。充実感が体中にみなぎります。

 
手術後9日目です。
かなり眼瞼の腫れ、皮下出血も引いてきました。元気で外来手術してますよ!

 
毎日が楽ですよ。
今まで眉毛を上げて眼を開けていたせいか、夕方になると眉毛付近が重だるかったです。頭痛も改善され、なによりも睡眠が深くなりました。交感神経過緊張が取れたのでしょう。
 
60歳まで手術ができそうです。
 
自分が受けた立場からはっきり言います。
眼瞼の構造を変える信州大学式眼瞼下垂手術は私の生活の質を変えてくれました。
エクセレントです。

眼瞼下垂手術 -こんな手術に注意!-

なんですか、これは?
 
最初に見たとき、驚きました。 What is the red line ?

 
目を開けるとアイシャドーのように赤い線が目立ちます。

 
名古屋市でレーシックを売りにしている眼科クリニックで眼瞼下垂手術を受けたそうです。
下垂も改善されずに、赤い線だけが残り日常生活にも支障があると。
 
眼瞼下垂の傷は重瞼ラインとなります。目立つことは通常ありえません。
それにしてもひどい手術ですね。おそらく皮膚だけを切除して縫合しただけでしょう。
 
こんなまがい物の手術が眼瞼下垂症手術として横行しているのも事実なのです。
 
皮膚だけを切るにしても切除部位が上すぎます。右が12mm、左が14mmです。
左右差もあります。 左は末広がり、右は末しぼみとデザインも無茶苦茶ですね。

 
ミクシーで私のことを知ったとのこと。何とかしてくださいと。
何とかなりますかね?
 
リスクがあります。
前医で皮膚をかなり切除されています。今回の手術で皮膚を切除できる幅は限られています。取りすぎは兎眼(目が閉じないこと)の原因となるからです。
 
瘢痕を切除して、創を重瞼ラインにするのがよいでしょう。
創の睫毛からの距離に左右差があるので、左側を2mm余分に切除します。

 
切開線をしっかりとした重瞼ラインにするため、挙筋腱膜を瞼板に固定して皮膚の折込を
作ります。

 
座位で左右差を確認します。

 
7-0ナイロン糸で細かく縫合します。この時点で左右差はありません。

 
術後1週間です。重瞼ラインができていません。大丈夫かな~。

 
術後1ヶ月です。
赤い線はすっきりとした重瞼ラインになっていますね。よかったです。
目も開けやすくなったと本人は満足です。

 
今回のブログはいろいろな意味でデリケートな問題を含んでいます。
 
「前医の治療にどうしても納得できないです。何であんな手術したんですか?
傷が残ることも手術前に全く聞いていませんよ。ブログで自分の顔を公表してかまいませんから事実を伝えてください。」 と本人の強い憤りもありました。
 
28歳の若い男性です。
あの赤い傷をつけたままずっと生活することを想像するだけで私も切なくなります。
 
正直、修正術を引き受けるのに随分と悩みました。
手術を決定するまで3回くらい時間をかけて話し合いました。
本人の決意がとても強いこと、私を信頼してくれることからGo サインをだしました。
 
開業医として日銭を追っている私にも医師としての矜持が少しは残っていたようです。

 
ヒポクラテス(医聖)の誓いを引用します。
自分の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。

眼瞼下垂手術 ー修正術を振り返ってー

たて続けに眼瞼下垂の修正術を行いました。
 
思うところがあります。
 
下の症例は眼科の先生より紹介を受けた症例です。
3年前に某総合病院の眼科で眼瞼下垂手術を受けられました。
 
術後の腫脹が3年経過しても取れず、睫毛内反を併発して眼球の痛みに苦しんでおられました。眼瞼下垂の過矯正が原因です。修正術を行いました。
 
切開して固定された糸を探します。

 
糸を3本抜糸しました。

 
ここからが問題です。
糸を外しても過矯正された挙筋腱膜が元に戻らないのです。
眼科の手術では挙筋腱膜を瞼板から剥離するので下床と強く癒着してしまうのです。
 
なんとか挙筋腱膜を剥離して過矯正を解除しました。

 
術後、眼瞼の腫脹と過矯正さらには睫毛内反は治りました。
患者さんからは感謝されましたが手術は大変でした(修正術なので自費診療です)。
 
久保田伸枝先生の書かれた「眼瞼下垂」文光堂から引用します。
やはり挙筋腱膜を瞼板から剥がし、再固定する術式が書かれています。

 
 
次は私が執刀した眼瞼下垂手術の修正術です。
 
術後の経過はよかったのですが、寝ているときに子供が顔につっこんできてから左眼が
下がってきたとのことです。糸が外れてしまった可能性があります。
 
切開したところ、内側の糸が緩くなっていました。このようなケースは初めてです。

 
糸を外して挙筋腱膜を前転します。
挙筋腱膜が瞼板と癒着していないので前転はスムーズに行えます。

 
右眼に合わせてプロリン糸で再固定して手術は終了です。

 
経過はとてもいいですよ。
 
信州大学形成外科方式の眼瞼下垂手術は挙筋腱膜の癒着が少ないため修正術」が比較的容易です。
 
信州大学形成外科方式は理論・術式とも素晴らしい手術です。
この術式が眼瞼下垂手術のスタンダードなものになるとよいですね。


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