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皮膚腫瘍

腱膜性眼瞼下垂症 ー術式の変遷ー

2010年1月号の月刊誌「形成外科」の特集は眼瞼下垂症の治療戦略でした。
 

 
高齢者の人口が増加する日本において、加齢による腱膜性眼瞼下垂症の注目度が増加しています。
 
オンラインショップのAmazonで興味深い本を購入しました。
眼科のご高名な久保田先生(帝京大学眼科名誉教授)が書かれた眼瞼下垂の本です。

 
眼瞼下垂手術の歴史などとても興味深く読ませていただきました。
眼瞼挙筋前転術の経結膜法であるBlaskovics法から経皮法であるBerke法への変遷。
 
4,000例を超える著者の手術経験は大変説得力があります。著者は経皮法による眼瞼挙筋前転術がより優れていると述べています。
 
信州大学形成外科の先生よりご指導を受けた自分としては見解を異にする点もあります。
 
久保田先生は瞼板側(下側)よりアプローチして、眼瞼挙筋を眼窩脂肪から剥離します。
また原則として上眼瞼の皮膚は切除しないようです。
 
私も片側のみの眼瞼下垂症、軽度の腱膜性眼瞼下垂症にはこの術式を選択することがあります。手術侵襲が低いからです(下の写真、鑷子で保持しているのが挙筋腱膜です)。

 
 
ここからが今回のブログの本当の趣旨です。
 
私は重症の腱膜性眼瞼下垂症では眼窩隔膜を切り開き、眼窩隔膜と挙筋腱膜を一体として前転させます。私はこの術式をご指導して頂きました。
 
かなり重症の腱膜性眼瞼下垂症の症例を提示します。
眼窩隔膜と一体に前転した右側の挙筋腱膜です。透けて見えるくらい薄くなっています。

 
同じ患者さんの左側の挙筋腱膜です。

 
腱膜性眼瞼下垂症がひどいケースでは、挙筋腱膜が伸びきり上の写真のように薄く伸びきっています。
 
これ程までに薄くなった挙筋腱膜をあえて眼窩隔膜から剥離するのは、挙筋腱膜そのものを損傷させるリスクがあると思いませんか?
 
薄くなった挙筋腱膜だからこそ眼窩隔膜と一体化してより強い支持組織として瞼板に再固定するのが理にかなっていると、私は信じています。
 
他のメリットとして、眼窩隔膜の切開後に眼窩脂肪を前転することによりsunken eye(眼窩の陥凹)の改善が見込まれます。
 
また、余剰皮膚を切除することによりシャープな重瞼ラインを形成することができます。
腱膜性眼瞼下垂の手術を受ける人の多くは上眼瞼の皮膚がたるんでおり、重瞼ラインが乱れているものです(美容目的の方は自費で両側で262,500円となります)。
 
使用する手術器具も大切です。
挙筋腱膜を優しく扱うために、斜視鉤と鑷子はマイクロアドソンセッシを使用します。
ここまでこだわってこそ、正しい腱膜性眼瞼下垂手術ができるのです。

 
眼科と形成外科とでは眼瞼下垂症手術へのアプローチが異なる点もあります。
手術症例を重ねる中で、そのギャップを自分なりに埋めていきたいと思うこの頃です。
 
 
参考文献
形成外科 克誠堂 Vol.53  2010年1月号
「眼瞼下垂 」 文光堂 久保田伸枝

脂肪腫 season 2

脂肪腫で当院を受診された患者さまからよく言われることがあります。
どの科を受診すればいいのか分からない。外科なのか整形外科なのか?
皮膚科で手術してくれるとは思わなかった・・・

私は勤務医時代から脂肪腫の手術も数多く手がけてきました。
その時の経験で感じたことがあります。
①脂肪腫は頭、後頚部、背、肩、下腹部、前腕によく見られる。その中でも肩、下腹部の脂肪腫は大きく育っていることがある。
②背部の脂肪腫を摘出すると肩こりの軽減を感じる人がいる。
③臨床的に脂肪腫と思っても病理組織検査で脂肪肉腫と診断されることがまれにある。

脂肪腫は良性腫瘍です。しかし大きくなると整容的に具合が悪いので肩、下腹部の脂肪腫は早期に摘出するようにしています。また皮膚科医として皮膚がん、肉腫(間葉系のがん)を見逃すことは許されないので全例を必ず病理組織検査に提出することにしています。

当院で最近経験した脂肪腫の治療を供覧します。脂肪腫の摘出術を受けたい患者さまに治療のイメージをお伝えすることができれば嬉しいです。
 
左鼡径部(股の付け根)の脂肪腫です。触ると柔らかい腫瘍です。

 
 
大きく切開して摘出するのが一般的です。しかし私は皮膚腫瘍のプロフェッショナルです。
傷を最小にすることをいつも心がけています。腫瘍の中央に11番メスで小切開を加え、揉みだして腫瘍を露出させてます。(上の写真と向きが違います)

 
 
摘出した検体です。なんともかわいらしい形ですね。

 
 
傷はわずか5mm程度です。創は何ミリまで縮小できるのか?
限界にチャレンジしたいですね。

 
 
真皮縫合を丁寧に行うので創はほとんど目立たなくなります。
手術の所要時間は15分くらいです。

 
 
左肩の脂肪腫です。かなり大きく手強い症例です。肩の脂肪腫は下の筋膜と癒着していることが多く切開を大きく取らざるを得ないです。しかし、本心では最小切開で摘出したい。特に肩関節付近は術後に創が瘢痕ケロイドとなりやすいのです。

 
 
このような症例で心強い武器が皮膚エコーです。LOGIQ Book XPの出番です。
脂肪腫の末梢側(肩関節と反対方向)は筋膜と癒着がなさそうです。
(黄色の矢印が筋膜です)

 
 
肩関節付近の脂肪腫は筋膜と癒着がありそうです。癒着があるかどうかは肩を動かしてもらい腫瘍と筋膜との引きつれの有無で判断します。黄色矢印の筋膜が引きつれています。
こうして術前のエコー検査で腫瘍の三次元的なイメージを頭にインプットします。

 
 
肩関節方向には傷を伸ばしたくないので腫瘍の中央部にのみ切開します。
周囲を揉むと脂肪腫が飛び出てきました。

 
 
ここからがポイントです。スーパーメッチェンで周囲を剥離します。出血しないようなるべく鈍的に剥離を進めます。

 
 
皮膚エコーの情報を参考にしながら腫瘍の底面を指で鈍的に剥離します。
この指での剥離はとても有効です。院長のゴールドフィンガーの出番です。

 
 
脂肪腫がどばっと出てきました。

 
 
露出した左肩の三角筋です。指で鈍的に剥離したため筋肉には損傷がありません。

 
 
ずいぶんと大きな脂肪腫ですね。これだけ大きいと病理組織検査で脂肪肉腫と鑑別することが大切です。今までは脂肪腫のためカッターシャツが着づらかったとのことです。
これでもう大丈夫です。 写真は脂肪腫の表側と裏側です。


 
 
腫瘍の治療で最も大切なことは腫瘍の完全摘出です。しかし皮ふ科SSクリニックには
それ以上のものが求められます。多くを求めて遠方から患者さまが来られるのですから。
先日は博多の方から問い合わせがありました。メジャーになってきました。
ちゃんとやらんとだメジャー。 はい、失礼しました。

 
 
ちなみにこの症例では手術の疼痛を軽減させるため点滴で鎮静剤(ドルミカムとソセゴン)を使用しています。サーフロ針、点滴のキットなど全て病院負担(いわゆる持ち出し)です。
愚痴ばかり言うなら自費診療しろ!! と言われそうですね。
やはり保険でできる手術は保険で行い患者さまの負担を減らしたいと考えています。
眼瞼下垂手術など特にそうです)
自分の社会的使命を認識して保険診療も行います(とりあえず3年は続ける予定です)。
みなさま、応援宜しくお願いします。

皮膚腫瘍摘出術 -私の考え-

皮ふ科SSクリニックには皮膚腫瘍の手術を目的に多くの紹介患者さまが来院されます。
皮膚腫瘍摘出術において重要なことは
①皮膚腫瘍の完全摘出
②手術の傷を目立たないようにする(特に顔面)

この2点に留意します。特に①の完全摘出が最も大切と私は考えています。
摘出が完全でない場合、腫瘍は再発します。その際に創部は瘢痕となっているため初回手術にくらべて摘出がずっと困難になります。初回手術が最も大切なのです。
完全摘出できているかどうかは病理組織検査で確認することができます。
皮膚腫瘍は必ず病理組織検査を行う病院で受けてください!!

皮膚腫瘍の摘出にメッチェン(手術用のハサミ)を使う先生もいますが私はメスを好んで使用しますメスで腫瘍を摘出する際に腫瘍の形態がメスを持つ指先に触感として伝わります。この感覚こそが腫瘍摘出の際に私が最も大切にしているものなのです。

メスはディスポーザブルのプラスティック製ものもありますが私は金属製のメスホルダーを使用しています。金属ホルダーの重さを利用して腫瘍を摘出します。
メスホルダーはFEATHER (日本製)、Swann-Morton (英国製)の2種類を使い分けます。Swann-Morton社製ホルダーのほうが重量があります。またそれぞれのメス刃の形も微妙に異なります。
 
写真上の金色のホルダーがSwann-Morton、下の銀色がFeather社 のメスホルダーです。

 
Swann-Morton社のメス刃(写真上)のほうが形がシャープです。

 
メスホルダーの重さを利用して組織を切ります。

 
繊細な操作はメスを立たせてメス刃の先端を使います。

 
 
実際の症例を4つ(粉瘤、外毛根鞘性嚢腫、脂肪腫、腱鞘巨細胞腫)提示します。
 
腰部の再発性粉瘤です。スキンフックで検体を引き上げメスで嚢腫壁を露出させます。

 
摘出した検体です。嚢腫壁がきれいに取れています。余分な組織はついていません。

 
頭頂部の外毛根鞘性嚢腫です。メスで切り開いていきます。

 
ひょうたんのようなめずらしい形ですね。きれいに取れています。

 

後頭部の脂肪腫です。脂肪腫は周囲の皮下脂肪と境界が分かりづらいことがあります。
このような症例こそメスが大切です。メスで脂肪腫と帽状腱膜をていねいに剥離します。

 
脂肪腫は完全に摘出されました。相変わらずいい仕事していますね(笑)。

 
手術直後の創です。時間が経過すれば傷はほとんど目立たなくなります。

 
腱鞘巨細胞腫の症例です。指にできやすい腱鞘(腱を被う薄い組織)由来の腫瘍です。
(この症例のみ私が名古屋大学医学部附属病院時代に執刀したものです)

 
腱鞘をメスで腱から除去しながら腫瘍を摘出します。このような操作はメスが最適です。

 
関節の拘縮を防ぐためS字に皮膚切開しています。再発しやすい腫瘍なので術後5年間
経過観察しました。もちろん再発なしです!! これが本当の皮膚腫瘍摘出術です。

 
写真は唐招提寺の千手観音立像の指です。やわらかく慈愛に満ちた指ですね。
こんな指になりたいと思いながらメスを握る日々です。

脂肪腫、石灰化上皮腫の手術

私はメスを握る皮膚科医です。
皮ふ科SSクリニックには手術を目的として数多くの患者さまが紹介されてきます。
その中でも粉瘤(ふんりゅう)は横綱です。
粉瘤と間違いやすい皮膚腫瘍として脂肪腫石灰化上皮腫があります。
今回はこの2つの疾患について述べてみたいと思います。

脂肪腫は粉瘤よりやわらかく、石灰化上皮腫は碁石様に硬く触れることより鑑別できます。
触診が診断の基本です。皮膚外科医の指はまさにセンサーの役割をします。

なぜ鑑別診断が必要なのか?それは手術法が異なるからです。
粉瘤はくりぬき法もしくは皮膚を含めて切除します。脂肪腫、石灰化上皮腫は皮膚切開のみで腫瘍を摘出します。実際の症例を供覧いたします。
 
右腰部の脂肪腫です。通常は腫瘍全体の大きさの半分以下の切開のみで摘出が可能です。皮膚を切開した後に揉みだして脂肪腫を取り出します。

 
 
2cm以下の傷です。真皮縫合もきっちりとされているので傷跡が目立ちません。
これなら患者さまも大満足ですね。

 
 
右眉毛内側の皮膚腫瘍です。粉瘤の疑いで紹介されましたが触診から石灰化上皮腫を疑いました。結婚前の若い女性です。傷を残すわけにはいきません。

 
 
眉毛の辺縁のラインを利用して皮膚切開します。白い腫瘍を丁寧に取り出しました。

 
 
術後1週間。抜糸直後の写真です。すこし発赤がありますが傷は目立ちません。
院長相変わらずいい手術してますね(笑)。

 
手術の傷跡を目立たなくするには最小切開、ランドマーク(眉毛、鼻、口唇など)を上手く利用することが大切です。
やはり皮膚腫瘍は手術に慣れた皮膚外科医が執刀するのが一番です。

皮膚腫瘍はほぼ全例を病理組織検査に提出します。診察、手術、病理組織検査、抜糸など全て保険診療です。
皮ふ科SSクリニックにお気軽にお立ち寄り下さい。
ちなみにSSは皮膚外科手術 Skin Surgeryが由来です。こだわっています。
 
 
(写真はいずれも個人情報保護法に基づき患者さまの承諾を得ています)


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