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院長Blog(治療について)

名古屋市中区にて皮膚科・美容外科を診療する「皮ふ科SSクリニック」の院長Blogです。

粉瘤 くりぬき法 season 5

くりぬき法は万能か?
 
Noです。炎症を併発した粉瘤は周囲と癒着するため、くりぬき法は不適です。
あまり大きな粉瘤も私は自信がありません。
 
頭もメスのほうが無難でしょう。背~腰部は真皮が厚く、嚢腫壁を剥離するのが大変です。
くりぬき法が最も適しているのは顔のような気がします。
 
最近経験した背部の粉瘤です。40年ものです。

 
本当はメスで切除したほうが無難なんですけどね~。
みなさん、ホームページを見てくりぬき法を期待して来られるようです。
でもこれだけ大きいとメスがいいよな~。独り言です。
 
「一応、くりぬき法を行いますが、摘出できる可能性は50%くらいです。取れないと判断したら途中でメスでの切除に切り替えます」と逃げのムンテラをします。
 
通常は4mmトレパンを使用しますが、今回は5mmトレパンを用いました。
内容物をしっかりと揉みだし、ぺしゃんこになった嚢腫壁を剥離して引っ張り出してきます。
剪刃の先端が嚢腫壁の底面です。

 
取れましたね。よかったです。写真左側が底面です。

 
大きい場合は術後の血腫が心配なので翌日に再診してもらいます。
手術翌日です。出血もなく問題ないです。

 
手術後2週間です。肉芽が盛り上がり、上皮化が始まっています。
あれだけ大きな粉瘤がニキビ痕くらいの傷ですむなら上出来ではないでしょうか。

くり抜き法、もう少し普及するといいですね。
しかし、大きな粉瘤はメスでの切除が無難かも。

ダーモスコピー

足のホクロに注意しろ!
 
そんな言葉を聞いたことがありますか?
 
ホクロのガンが悪性黒色腫(メラノーマ)です。
日本人に発生する悪性黒色腫の30%以上が足に局在します。
理由は分かりません。白人にそれとくらべると足にできる頻度が多いのです。
 
私が皮膚科に入局した頃は眼で見て判断するしか方法がありませんでした。
医学は進歩します。
 
ダーモスコピーと呼ばれる拡大鏡の普及です。
ただ単に病変を拡大するだけではなく、病変部にゼリーをつけることで光の透過性を高め
より深部まで観察することができます。

 
具体的に説明します。
手掌・足底には指紋があります。指紋を形成する溝を皮溝、丘を皮丘と呼びます。
良性のホクロは皮溝を中心に色素が見られます。
これとは対照に悪性黒色腫は皮丘に色素がでます。
 
いくつかホクロのダーモスコピー像を提示します。
 
ぼんやりとした色調の褐色斑です。肉眼で良性、悪性を判断するのは難しいのでは?

 
ダーモスコピー所見です。皮溝優位の典型的な良性(parallel furrow)のパターンです。
放置して問題ないでしょう。

 
子供の足です。かわいい足ですね。足底に色素斑があります。
私は肉眼で良性、悪性を判断する自信がありません。

 
皮溝の線状の色素沈着と皮丘の淡い褐色斑。mixed pattern と呼ばれます。
これも良性のホクロで見られるパターンの一つです。

 
2例目のような複雑なパターンを肉眼で診断することは不可能だと思います。
ちょろっとルーペで見て、多分だいじょうぶでしょう、と診断する医師もいます。
ルーペでこの煩雑なパターンが分かりますか? 多分とはどういう意味ですか?
 
踵の色素斑です。中心は濃く周囲は薄い色です。色ムラがありますね。
さあ、診断は?

 
皮溝を取り囲むようにdot(点)が平行に並んでいます。
double dotted line variant 、皮溝優位のパターン(parallel furrow)のsub typeです。
これも良性のパターンです。診断にはちょっと慣れが必要ですね。

 
3番目の症例などは10年くらい前まではメスで切除して病理組織検査に提出して良性、
悪性を確認するのが一般的でした。
 
今はそんなことはほとんど行いません。
ダーモスコピーである程度の鑑別診断がつくからです。エビデンスのあるツールです。
 
良性の可能性が高ければメスを入れる必要はない、と私は考えています。
 
ダーモスコピーは保険適応の検査です。72点です。
保険診療では1点が10円なので検査は720円です。3割負担で200円ちょっとです。
保険診療は日本の素晴らしいシステムです。 しかし安すぎるぞ~、厚生労働省!
 
気になるホクロがあればお近くの皮膚科でダーモスコピー検査を受けてください。
 
ホクロというありふれた疾患に対してどこまで誠実に対応してくれるのか。
そんなところに皮膚科クリニックのレベルがあらわれるのではないでしょうか。

Qスイッチレーザー 『不都合な真実』

私がレーザー治療に関わり始めたのは虎の門病院皮膚科に国内留学(平成11年~)したのがきっかけです。それから10年以上が経過しました。
 
その頃の虎の門病院には赤アザ用のダイレーザー、しみ用のルビーレーザー、Qスイッチ
アレキサンドライトレーザー、YAGレーザーがありました。
 
このブログで何度も書いていますが、虎の門病院の大原国章先生の臨床能力はとてつもなく凄いです。手術以外にレーザー治療でも多くを学ばせてもらいまいした。
 
レーザー治療の中で強く感じたことがありました。
「太田母斑のようなアザ治療はアレキサンドライトレーザーも効果があるが、しみ(老人性色素斑)はアレキサンドライトレーザーよりもルビーレーザーのほうが効果が高い」。
 
このことは虎の門から名古屋大学皮膚科に帰局した後もずっと頭にこびりついていました。
 
大学にいる8年間、名東区の病院で週に一回、皮膚科の外来をしていました。
その病院にはQーアレキサンドライトレーザーがありました。
 
個人病院です。レーザー治療の対象はしみがほとんどです。
シミ治療は自費診療ですから金額も数万円単位と高額になります。
当然、患者さんはしみが跡形も無くきれいに取れると信じています。
治療結果は? よい結果もあり、よくない結果もある。
 
患者さんへ対応が大変でした。「必ずきれいにとれる保障はないですけどいいですね」と
何回も説得して承諾書まで渡してレーザー治療していました。
 
美容先進国アメリカではQ-YAGレーザー、アレキサンドライトレーザーはタトーレーザーとして位置づけられていると知り合いの美容外科医から聞きました。
そうです。タトー(tattoo)刺青を治療するレーザーなのです。
たしかにQ-YAG(532nm)は赤色の刺青(いれずみ)を消すには必須です。
 
レーザーにはそれぞれの役割があるのです。
 
問い合わせの多いADM(両側性遅発性太田母斑様色素斑)について再考。
 
週に2人くらいの割合で外来初診で見かけます。想像以上に多いので驚いています。
開業する以前の私は鑑別ができていなかったのでしょう。 やぶでした、以前は。
 
なかにはエステに通って治療を受けている人がいます。
エステではADMはいくらお金をかけても絶対に改善しません。私が保障します。
Qスイッチレーザーしか効果がないのが医学的事実です。
 
ではQスイッチレーザーの中でどれが最も有効か?
 
葛西健一郎先生の名著「シミの治療」より抜粋します。
ADMの効果について点数がかかれています。
ルビー 95点、アレキサンドライト 70点、YAG 60点 となっています。
ヤグッ、がんばれ~。
 
波長はルビー 694nm、アレキサンドライト 755nm、YAG 1064nm です。
メラニンに最も吸収がよいのはルビーの694nm、深くまで進むのは波長が長いYAGの1064nmです。
 
ADMは太田母斑にくらべれば真皮に増生したメラノサイトは浅いところにあります。
だからこそ太田母斑のように青くはなく、灰色~褐色を呈するのです。
ADMを単純に太田母斑と同列に扱うのはナンセンスです。

「An Atlas of Surface Microscopy of Pigmented Skin Lesions」  より引用
 
私が言いたいこと。
ADMの治療で大切なのは波長+レーザーの照射時間ではないでしょうか?
 
Qスイッチレーザーの照射時間は、
ルビーが20ns、アレキサンドライトが50-100ns、YAGが10nsです。
 
葛西先生はルビーの波長694nm 照射時間 20nsが真皮メラノサイトを破壊するのにちょうどよいのではないかと推測しています。
 
真皮浅層で増生したメラノサイトをいかにたたくか。これが治療の鍵でしょう。
 
また話がずれます。
ADM、太田母斑にアレキサンドライトレーザーはそこそこ効果があります。
 
しみにはダントツでルビーが効きます。
 
私の知り合いの多くの形成外科医が同意しています。日本では皮膚科医よりも形成外科の先生がレーザー治療を積極的に行う傾向があります。
 
私の8年間のアレキサンドライトレーザーの治療経験、クリニックを開院してからの
トライバンテージ(Q&マイクロセカンドのアレキサンドライトレーザーとQ-YAGレーザーの
複合機)、メドライトC6(Q-YAGレーザー)の治療経験に裏打ちされた事実です。
私は自分の目で見た結果しか信用しません。
 
シミ治療の切れ味は機種ではなく、出力の問題に過ぎないと言われる先生もいるようです。
複数のQスイッチレーザーでの治療経験が少ないように思われます。
 
レーザー治療は理論が先行しますが、治療結果とギャップがあるのが普通です。
フォトRF治療のSRからSRAハンドピースの開発、フラクセルレーザーの進化などは
そのことを如実に物語っています。
 
ADMにルビーとYAGのどちらがより有効か?
私には断言するだけのYAGレーザーでのADM治療経験がありません。
 
以前にもこのブログに登場した患者さんを再度提示します。
頬部に小斑状の灰褐色斑があり、典型的なADMの皮疹です。

 
ルビーレーザーを1回照射して1年間がたちました。
治療は1回だけです。


 
1回の治療でここまで改善したらまずまずではないでしょうか。
これが私の答えです。
 
追伸
ブログ掲載を快く引き受けてくれたSさん本当にありがとう。
あなた方のようなSSクリニックの心強いサポーターがいるからこそ、私たちもここまで治療を追求して頑張れるのです。いい治療(自分が受けたい治療)を追求します!

たかが粉瘤、されど粉瘤 season 3

耳の粉瘤はちょっと苦手です。
 
耳垂部の表裏に癒着していることが多く、くりぬき法よりメスで摘出したほうが無難です。
 
手術はこんな感じです。メスで耳垂の縦方向に切開します(右耳の裏側です)。

 
ルーペで確認しながら慎重に切除します。右第5指がポイントかも。

 
指を上手く使うといいですね。取り残しは絶対だめ!!
この指の使い方は眼瞼下垂手術にも生きてくるのですよ。

 
取れました。割と大きかったです。

 
病理組織検査で確認しましょう。

 
きれいに取れましたね。 プロフェッショナルですから。
 
でも耳の粉瘤はちょっと苦手かも・・・。

Q スイッチルビーレーザー 【知る悲しみ】

開高 健先生の言葉を引用します。
 
「いい物を手にすると大きな悲しみも待っている。いわゆる知る悲しみだ」
「いったん知ってしまえば知らなかったときには戻れない」

 
さすが開高文豪、心に響く言葉です。
 
しみ治療にあたり、ルビー、YAG、アレキサンドライトの3つのレーザーを試しました。
始めはメンテナンス費の安いQ-YAGレーザーが購入候補でした。
 
しかし、切れ味が違うのですよ、ルビーは。
 
美容外科で照射された例のひと。

 
レーザーは効かないと半信半疑。説得して一つ照射。

 
信頼を勝ち得たところで、残りを照射。
しみが痂皮となってぺろりと取れるこの瞬間が私は好きです。

 
まだちょっと赤いです。遮光しっかりしてくださいね。

 
お化粧が楽しくなったと。よかったです。もっとなじみますよ。

 
Qスイッチルビーレーザーは大変デリケートな機械です。
年に4回ほどメンテナンスを受けます。年間100万円近くのランニングコストがかかります。
 

最初はQ-YAGレーザーを購入してお茶を濁そうと思いました。
肝斑にはYAGの空中照射ですよ~、なんて商売っ気をだして稼ごうかとも思いました。
 
でもルビーの切れ味を知ってしまうと・・・。
 
知る悲しみです。
この機械、金かかんな~、と悲しい時もあります。
 
そんな時は文豪の言葉で慰められます。
「知らない悲しみよりも知る悲しみのある人生のほうが高級だ」。


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