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診療だより

診療だよりの記事一覧

  • 脂腺嚢腫 -多発性毛包嚢腫-

    2014-02-18 UP!     カテゴリー:粉瘤, 診療だより

    体に生じやすい、ぷつぷつしたできもの。

    非常に数が多く、お困りになり受診される方もいます。

    多発性脂腺嚢腫と呼ばれる皮膚腫瘍です。

    多発性毛包嚢腫とも呼ばれますが、嚢腫壁に脂腺が開口していることより、
    脂腺嚢腫の病名のほうが病態を反映していると思います。

    Blog に協力していただき、ありがとうございます。

    27歳の女性です。腹部を中心に豌豆大の腫瘍が多発しています。

     

    できものをマジックでマーキングしました。大きな傷痕は前医での治療です。

    多発する腫瘍です。なるべく傷を小さくして摘出したいです。

    エコー検査。近くで多発しているのが分かります。わりと深いですね。

     

    私の脂腺嚢腫への手術アプローチ法はほぼ確立しています。

    2mm トレパンで腫瘍をくり抜きます。2mm トレパンを使用するのがコツです。

     

    黄色のクリームチーズ様の内溶物を出してから、袋(嚢腫壁)を取りに行きます。

    脂腺嚢腫は嚢腫壁が本態です。粉瘤より嚢腫壁が波打っており、
    脂腺管が開口しているのが大きな特徴です。

    みき先生の皮膚病理診断ABC ②付属器病変 泉 美貴先生より引用

    嚢腫壁を摘出します。できるだけ刃先が薄い剪刃と小さいが保持力のある鑷子を使う
    ことがポイントです。私は榊(サカキ)の異物鑷子とアイリス剪刃を使用しています。

     

    嚢腫壁を底面から、きれいに摘出します。

     

    脂腺嚢腫は臨床所見が多彩です。ぷりっと出てくるものもあります。

     

    穴は大きく見えますが、わずか 2mmです。極限への挑戦!

     

    どうですか。しっかりと取れているのがお分かりになると思います。

     

    たくさん取ったな~。けっこう疲れる手術です。

     

    創は5-0 青ナイロンで一針だけ縫合します。1週間後に抜糸です。

     

    以前は炭酸ガスレーザー、エルビウムヤグレーザーで小穴をあけて、摘出していました。
    これだと、やはり再発することがあります。

    いろいろな試行錯誤を経て、現在の手技に落ち着きました。
    再発率はほぼなく、創も数ミリです。

    簡単な手技のようですが、ここまでたどりつくのに10年近くかかりました。

    トレパン(穴をあける丸いメス)は、いろいろな可能性を持った医療器具です。
    患者さんへのご負担が、より少ない治療法を提供し続けていきたいです。

  • 感染性粉瘤について

    2014-02-06 UP!     カテゴリー:粉瘤, 診療だより

    粉瘤に感染が生じると赤くなり、痛くなります。

    その状態では手術できません。お近くの皮膚科へ、早く受診してください!

    抗生剤の内服、場合によっては切開排膿が必要です。
    感染が落ち着いて、1ヶ月ほどしたら手術が可能です。

    残念ですが、一度感染が生じると、くりぬき法は難しいです。

    今回は感染性粉瘤について。

    ブログにご協力いただき、本当にありがとうございます。

    53歳の女性です。数年前より右乳房内側にあった粉瘤が感染。
    地元の皮膚科で感染をコントロールした後に、当院をご紹介頂きました。

    右乳房内側に腫瘤があります。わずかですが発赤も残っています。
    痛みはなく、感染は落ち着いたようです。

     

    エコー検査です。嚢腫壁の輪郭が不整です。炎症後の所見です。

     

    エコー画像から、くりぬき法は不適応と診断。

    メスで切除するしかありません。
    が、胸は肥厚性瘢痕の好発部位です。

    私としてもあまり気が進みません。

    傷がかなり残る可能性があることを、じゅうぶんに説明します。
    傷が残っても、痛みが再発しないほうがよいとのこと。

    胸は直線の傷になると、肥厚性瘢痕のリスクが高くなります。

    乳房の内側縁に沿ってデザインします。

     

    感染後の粉瘤は、通常よりも広範囲に切除したほうが無難です。
    当然ですが、傷はひらきます。

     

    切除した検体です。

     

    病理組織検査です。粉瘤の壁の下方は破壊されています。

     

    粉瘤下方のアップです。しっかりと取り切れているのが、お分かりと思います。

     

    切除する境界、深さは経験と勘によるところが大きいです。
    メスで切り込むと、炎症がある部位は組織は硬い、色が白色、褐色変性しています。

    メスから伝わる指先の感覚、切り込んだ組織の所見を冷静に観察して、執刀します。

    この症例は二度と再発することも、痛くなることもないでしょう。

    吸収糸(4-0 PDS)で真皮縫合をしっかりと行い、創を盛り上げます。
    ナイロン糸でやさしく、あえて曲線となるように皮膚縫合します。

     

    胸の傷が残りやすい部位です。
    3ヶ月くらいテーピングをしてもらいます。

    手術1ヵ月後の写真です。

     

    胸の手術はほんとうに気が引けます。
    今のところ順調ですが、これから1年間は経過観察しないといけません。

    粉瘤は感染する前に治療するのがよいと、私は思います。

  • レーザー脱毛 -お口周りの手入れ-

    2014-01-19 UP!     カテゴリー:レーザー脱毛, 診療だより

    女性のお口周りの産毛。

    定期的に毛剃りをされるご婦人も多いようです。

    隠れたエチケットポイントだと思います。

    思い切って脱毛されてはどうでしょうか?

    産毛などのごく細の毛の脱毛は難しいです。
    エステやフォトフェイシャルなどの光脱毛では絶対に抜けません。

    shock lossで一時的に薄くなることはありますが、いづれもとに戻ります。
    私のかつての実体験です。昔の患者さん、すみません。

    もうJMEC社にはだまされません(笑)。

    レーザー脱毛は毛のメラニン色素に光エネルギーを反応させます。
    細い毛はメラニン色素が少ないので、反応させるのが大変です。

    強いパワーが必要ですが、皮膚を守る必要があります。

    一般にスポットが大きいほうが光が深部まで届きます。
    スポットが大きいと条件設定が制限されます。

    女性の口周りの脱毛。条件設定が難しいので、細心の注意を払い本気で照射しています。

     

    女性の口周り脱毛のポイントは細やかな条件設定です。

    毛が細いのでパルス幅を短く設定します。患者さんごとにハンドピースを変えます。

    表皮を損傷させないロングパルスヤグを選択し、ハイパワーで照射します。
    Gentle LASEなどロングパルス・アレキサンドライトで産毛を治療するのは困難でしょう。

    こだわりのハンドピースです。

     

    54歳の女性です。ブログに協力して頂き、本当にありがとうございます。
    産毛がないほうが、素敵ですよ。

     

    ロングパルスヤグレーザー照射後です。少し痛いです。照射後は赤くなります。
    一日経過すれば発赤はなくなります。

     

    4~5回の照射で80%以上の減耗を目指しています。
    評判は上々です。本気でやってますから。

    興味があるかたは、お気軽にクリニックにお問い合わせ下さい。

  • 眼瞼下垂手術 -修正手術について-

    2013-12-23 UP!     カテゴリー:眼瞼下垂, 診療だより

    ブログに協力して頂いた患者さんに感謝します。

    51歳の女性です。
    当院を受診(平成25年5月)する約2年前に某個人クリニックを受診。

    左眼が右より下がり、眼瞼下垂の傾向があるとのことで、
    左眼のみ眼瞼下垂手術を受けました(保険)。

    手術後より、治療を受けた左のまぶたが重くなったようです。

    当院受診時の写真です。
    左眼の重瞼ラインが広がり、左眼のうえのくぼみが深くなっています。

     

    治療を受けたクリニックの院長に相談したところ、
    保険診療だからこの程度でよいと、強く言われたそうです。

    まったく意味不明の言葉です。

    この患者さんを左眼を見て、筋腱膜を切られているなと、推測しました。
    手術後より左のまぶたが重い、重瞼線が広がっているからです。

    右眼も眼瞼下垂の傾向があるので、両眼の眼瞼下垂手術を行いました。

    やはり、左眼は挙筋腱膜が全長に渡り、すっぱり切れていました。
    セッシでつまんでいるのが切れた挙筋腱膜の断端です。

     

    挙筋腱膜を前転して、適正な位置で瞼板に固定します。

     

    術直後から左眼が開けやすくなったと、感謝されました。

    手術前の左まぶたです。重そうなまぶたです。

     

    手術2ヵ月後の写真です。
    まぶたが開き、重瞼幅、まぶたのくぼみも改善されています。

     

    眼瞼の手術を受けてから、まぶたが重くなった患者さんが来られます。
    挙筋腱膜が損傷された可能性があります。

    上眼瞼の構造はとても繊細です。
    執刀医は眼の解剖学を熟知する必要があります。

    これからも、よりよい眼瞼形成術を提供できるクリニックでありたいです。

  • 骨腫 -Osteoma-

    2013-11-28 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    おでこの皮膚腫瘍は、何か?

    前額部で多いのは脂肪腫です。
    頻度は少ないですが、骨腫と呼ばれる腫瘍もあります。

    今回は骨腫について。

    ブログに協力していただいた患者さまに、厚く御礼申し上げます。

    64歳 女性。 幼児期より、前額に膨らみがあったそうです。

     

    触ると、石のように硬いです。典型的な前頭骨腫の所見です。

    超音波検査。硬い腫瘍の表面で超音波が反射するため、無エコー領域が広がります。

     

    骨腫には専用の医療器具が必要です。以前は総合病院に紹介していました。

    ご指名があるので、購入しました。骨ノミとナイロンハンマーです。

     

    通常は髪の生え際を切開します。今回は前額のシワが深い
    ので、シワを利用して切開線をデザインします。1cm強です。

     

    前頭筋を露出します。骨腫はこの下にあります。

     

    白い塊が骨腫です。頭蓋骨と連続しています。

     

    骨ノミとハンマーを用い、ゴツンと剥離摘出します。
    骨ノミをなるべく水平方向に進めるのがコツです。コツ腫だけに、コツんと。

     

    きれいに取れました。表側です。

     

    裏側です。フラットな面で取れているのが分かると思います。

     

    病理組織検査です。骨細胞から構成される腫瘍です。

    創部にドレーンを留置して、筋層、真皮縫合、皮膚縫合と
    三層に縫合します。

    術後に上眼瞼が腫れました。
    骨腫の手術治療はやや侵襲が高い手術です。

    前額は脂肪腫もそうですが、筋層を切開すると、上眼瞼が腫れることがあります。
    手術前には、十分な説明が必要です。

    なかなか、骨腫をしっかりと治療する病院は少ないですね。

    総合病院の皮膚科・形成外科と骨腫をめぐって、いろいろとありました。
    とりあえず、私が頑張ります。

  • 脂肪腫 -若き皮膚外科医たちへ-

    2013-11-21 UP!     カテゴリー:皮膚腫瘍, 診療だより

    かつての上司に言われました。

    「君もそろそろ若い先生を育てることを考えなくてはいけないよ。」

    その通りです。
    いろいろな先生に教えていただき、ここまで到達しました。

    ホームページの場ですが、皮膚外科を志す若き皮膚科医たちへ。
    愛のメッセージ、第2弾。

    今回のテーマは、脂肪腫です。

    41歳の女性。右背中の脂肪腫です。エコー診断。どれが脂肪腫か、わかりますか?

     

    紡錘形のかたまりが脂肪腫です。子供のお落書きのような絵ですみません。

    脂肪腫は筋膜と接して局在しています。
    背の脂肪腫は大きくなると違和感、肩こりを訴えることがあります。

    筋膜への影響があるのかもしれません。

    切開デザインです。手術はデザインがとても大切です。

     

    斜め横方向のラインが Langer皮膚割線です。

    この方向に切開すると、創が目立ちにくいと言われています。
    本当にそうでしょうか?

    顔の皮膚割線は、それでよいと思います。
    四肢、軀幹は、動いたときの緊張を考えるとよいです。

    患者さんに上半身を動かしてもらい、動きが少ない縦方向に切開します。
    こういうことは、教科書には書かれていません。

    脂肪腫の底をメスで切除します。

     

    剪刃(ハサミ)で切除するのもよいですが、皮膚腫瘍はメスで切除するのが
    基本です。

    メスから伝わる感覚を通して、皮膚腫瘍と正常組織の境を認識して、過不足
    なく腫瘍を摘出します。

    若い先生がたは、メスで摘出する習慣を持っていただきたい。
    悪い癖は生涯残ってしまいます。

    手術がうまくなりたいならば、うまい先生の手術を見て、英文論文で術式を
    学ぶことをお勧めします。

    脂肪腫は、指もしくは筋鈎での鈍的剥離が手術最大のポイントです。

    脂肪腫の底面と筋膜の境界部の止血も、ポイントの一つです。

     

    脂肪腫が大きくなるほど、dead space(死腔)も大きくなり、それに比例
    して、皮下血腫のリスクが高まります。

    止血操作はしつこいくらい行ってください。

    摘出します。大きな脂肪腫に、娘脂肪腫がくっついています。
    親子脂肪腫でした(勝手に命名)。

     

    検体です。きれいに全摘しました。病理組織検査の結果は脂肪腫です。
    病理組織検査は必ず提出しましょう。

     

    少し盛り上がるように吸収糸(この症例は4-0 PDS)で真皮縫合します。
    今回はドレーンは留置しませんでした。

     

    最初は、切開線を小さくすることにとらわれず、脂肪腫の大きさに合わせて切開
    すると、腫瘍が取りやすいです。

    指での鈍的剥離が、うまくできるようになった時点で、切開創を少しずつ小さくする
    のがよいと思います。

    がんばってください。

    第29回日本皮膚外科学会は和歌山で開催されます(平成26年9月13~14日)。
    和歌山県立医科大学(会頭 山本有紀先生)が事務局です。

    全国の若き皮膚外科医よ、和歌山で会いましょう!

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