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眼瞼下垂

腱膜性眼瞼下垂症 -Sunken eyes-

Sunken eyes とは何でしょうか?
 
動詞 sink (沈む、くぼむ)の過去分詞が sunkenです。
イギリス英語では sunken を形容詞としても用いるようです。
 
sunken eyes  くぼんだ目という意味でしょうか。
 
腱膜性眼瞼下垂症の患者さんにはsunken eyesを呈している人が多いのです。
 
下の絵は腱膜性眼瞼下垂症の解剖です。
挙筋腱膜が瞼板からゆるんだり、はずれることで眼瞼下垂が生じます。
 
眼窩脂肪を被う眼窩隔膜と挙筋筋膜はくっついているため、腱膜性眼瞼下垂症では
眼窩脂肪も眼の奥に引き込まれていきます。これがsunken eyesの原因です。

 
最近、私が執刀した腱膜性眼瞼下垂症の症例を提示します。
 
54歳の女性です。眼の開けづらさ、頭痛、左眼の奥の痛みを主訴に来院されました。
上眼瞼のくぼみが著明ですね。

 
電子カルテから拝借します。MRD が右1mm、左0.5mmと重症な眼瞼下垂症です。

 
右上眼瞼の挙筋腱膜を前転したところです。上のほうに黄色い眼窩脂肪が見えます。sunken eyesの強い症例では皮膚縫合の際にこの眼窩脂肪にも糸をかけるのがコツです。

 
術後1ヶ月半の写真です。
眼の開けづらさはもうありません。頭痛、眼の奥の痛みも消退しました。
sunken eyesも著明に改善しているのが分かりますね。

 
54歳、人生もう一花咲かせられそうですね。
 
腱膜性眼瞼下垂症の手術は眼のあけづらさを解消する機能を目的とした手術です。
しかし、結果として上眼瞼の若さも得られることが多いのです。
 
まさに機能美の追求でもあります。
 
追記
遺伝的に上眼瞼のくぼみが強い人もいます。脂肪注入などもよいと思います。
残念ですが私は脂肪注入を行っていません。
脂肪注入を希望のかたには岐阜市にある「市田クリニック」さんを紹介しています。
院長の市田正成先生の技量はとても素晴らしいです。

腱膜性眼瞼下垂症 ー術式の変遷ー

2010年1月号の月刊誌「形成外科」の特集は眼瞼下垂症の治療戦略でした。
 

 
高齢者の人口が増加する日本において、加齢による腱膜性眼瞼下垂症の注目度が高くなっています。
 
オンラインショップのAmazonで興味深い本を購入しました。
眼科のご高名な久保田先生(帝京大学眼科名誉教授)が書かれた眼瞼下垂の本です。

 
眼瞼下垂手術の歴史などとても興味深く読ませていただきました。
眼瞼挙筋前転術の経結膜法であるBlaskovics法から経皮法であるBerke法への変遷。
 
4,000例を超える著者の手術経験は大変説得力があります。
著者は経皮法による眼瞼挙筋前転術がより優れていると述べています。
 
信州大学形成外科の先生から指導を受けた自分としては見解を異にする点もあります。
 
久保田先生は瞼板側(下側)よりアプローチして、眼瞼挙筋を眼窩脂肪から剥離します。
また原則として上眼瞼の皮膚は切除しないようです。
 
私も片側のみの眼瞼下垂症、軽度の腱膜性眼瞼下垂症にはこの術式を選択することがあります。手術侵襲が低いからです(下の写真、鑷子で保持しているのが挙筋腱膜です)。

 
 
ここからが今回のブログの本当の趣旨です。
 
私は重症の腱膜性眼瞼下垂症では眼窩隔膜を切り開き、眼窩隔膜と挙筋腱膜を一体として前転させます。私はこの術式をご指導して頂きました。
 
かなり重症の腱膜性眼瞼下垂症の症例を提示します。
眼窩隔膜と一体に前転した右側の挙筋腱膜です。透けて見えるくらい薄くなっています。

 
同じ患者さんの左側の挙筋腱膜です。

 
腱膜性眼瞼下垂症がひどいケースでは、挙筋腱膜が伸びきり上の写真のように薄く伸びきっています。
 
これ程までに薄くなった挙筋腱膜をあえて眼窩隔膜から剥離するのは、挙筋腱膜そのものを損傷させるリスクがあると思いませんか?
 
薄くなった挙筋腱膜だからこそ眼窩隔膜と一体化してより強い支持組織として瞼板に再固定するのが理にかなっていると、私は信じています。
 
 
使用する手術器具も大切です。
挙筋腱膜を優しく扱うために、斜視鉤と鑷子はマイクロアドソンセッシを使用します。
道具にもこだわってこそ、正しい腱膜性眼瞼下垂手術ができると思っています。

 
眼科と形成外科とでは眼瞼下垂症手術へのアプローチが異なる点もあります。
手術症例を重ねる中で、そのギャップを自分なりに埋めていきたいと思うこの頃です。
 
 
参考文献
形成外科 克誠堂 Vol.53  2010年1月号
「眼瞼下垂 」 文光堂 久保田伸枝

眼瞼下垂手術 Life work

私のライフワークのひとつが腱膜性眼瞼下垂手術です。
 
多くは語りません。手術は結果が全てです。
 
41歳の男性です。私が経験した中でも重症の眼瞼下垂症です。
日常生活ではアイプチをしています。そうしないと目が開かないのです。
 
MRDは左右ともマイナス。LFは左右とも 0.2mmです。

 
かなり重症です。しかし、睫毛と眉毛の距離はそれ程離れていません。
手術はデザインがとても重要です。この一枚の写真から瞬時にいろいろな情報を得ます。
 
切開線はgray line より6mm、皮膚の切除幅は7mmにとどめました。
重症例ですが、この症例では皮膚を切除しすぎないのがポイントです。
 
専門用語が多くてすみません。私のブログは同門の先生がたも見ていますので。
 
眼瞼下垂手術において通常は眼窩脂肪は切除しません。しかし今回の症例に限っては
眼窩脂肪が多いため一部を切除しました。これで上眼瞼もすっきりとします。

 
術後1ヶ月の写真です。もうアイプチをしなくても目が開きます。

 
眼を閉じた写真です。創も自然で目立ちません。

 
術後2ヶ月の写真です。
手術直後に比べると1mmくらいは戻りますね。手術はやや過矯正でちょうどよいのです。

 
術後3ヶ月の状態です。目元の表情が柔らかくなって自然な奥二重です。
手術デザインをしっかり考えて行うと、派手な二重瞼ではなく、その人にあった眼瞼の形態に落ち着きます。手術はデザインがとても重要なのです。

 
 
この患者さんが言われました。「先生、アイプチを使わなくても目が開くようになりました。
頭痛も肩こりもなくなりました。一番驚いたのは記憶力がよくなったことですよ。何も忘れないんです。自分でも驚いています。」
 
眼瞼下垂手術と記憶力。関係はないと思いますが・・・。
 
この手術からは色々な事に驚かされます。
頭痛、肩こりがなくなった。足の冷えがなくなった。記憶力がよくなった、などなど。
 
眼瞼下垂手術で交感神経の過緊張が取れて全身の血流がよくなるせいでしょうか?
 
まだまだ未知の領域が多い分野です。だからこそやりがいがある手術なのです。

松尾式マイクロ持針器 【眼瞼下垂手術、匠への道】

ついに購入しました!

ずっと欲しいと思っていました。
信州大学形成外科 松尾 清教授が考案した眼瞼下垂手術用の持針器。
1本 9万円もするのですよ(涙)。

いい手術をするにはいい道具が必要です。弘法、筆を選ぶ、です。

下の写真がロック付マイクロ持針器(フォーメディック社)です。

 
先端のカーブが何とも魅惑的ですね。

 
 
眼瞼下垂手術を執刀してつくづく思います。
 
この手術に1例として同じ症例はない。
 
眼窩隔膜・挙筋腱膜の厚さ、下横走靭帯の走行、瞼板の固さなど、どれをとっても
全例が異なるのです。

難しく感じる反面、その奥の深さに完全に魅了されています。
こんなにやりがいのある手術は少ないですよ。
 
匠への道を進みます。

3年後の自分は眼瞼下垂手術についてどんな印象を持っていますかね?

腱膜性眼瞼下垂 【手術の手順について】

まぶた、開けにくくないですか?
 
ハードコンタクトレンズの影響でしょうか、30歳代で当院を受診される腱膜性眼瞼下垂の人が増えています。なかには20歳代の方もおられます。
 
腱膜性眼瞼下垂とはまぶたを挙げる挙筋腱膜と瞼板の結合がゆるんだりはずれたりすることで生じる症状です。
 
いろいろな術式がありますが挙筋腱膜を瞼板としっかりと固定することが手術の基本です。
 
眼瞼下垂症の目安としてMRD (margin reflex distance)がよく用いられます。
これは 角膜反射(黒目の中心)と眼瞼縁の距離のことです。
 

正常ではこの距離は3.5~4.0mm程度です。軽度の眼瞼下垂では1.5mm前後、中程度では0.5mm前後、重症では角膜反射が隠れるためマイナスの値となります。
 
その他に上眼瞼挙筋機能 LF(前頭筋をブロックした状態で上と下を見てもらい、この間の距離を測定します)、挙筋腱膜の評価(睫毛の向き、重瞼の幅の左右差)を参考にします。
 
私が実際に行っている手術について供覧いたします。
 
 
52歳の女性です。
黒目にまぶたがかかっており、目が開けにくそうです。睫毛は下を向いています。
 
まぶたを挙げるのにおでこの筋肉(前頭筋)を用いるため眉毛は上がり、眉毛と上眼瞼の距離が伸びています。眼窩脂肪も引き込まれるため眼窩が陥凹しています。
 
その他に慢性的に頭が重い肩こりの症状を併発しています。これらの所見は腱膜性眼瞼下垂症でよく見られる所見です。 ちなみにこの方のMRD は右 1.0mm 左 0.5mm です。

 
 
睫毛から5~6mm上でデザインします。皮膚は5mmにしました。
手術の2時間前に麻酔テープをまぶたに貼ってきてもらい、麻酔の痛みを減らします。

 
 
皮膚、眼輪筋を切除した後に眼窩隔膜を切開します。眼窩隔膜を切らない術式もあります。しかし、腱膜性眼瞼下垂症の人の挙筋腱膜はうすくなっていることが多いので私は全例、切開した眼窩隔膜を反転させて挙筋腱膜といっしょに前転させています。

 
 
眼窩隔膜と腱膜の翻転部にある下横走靭帯の内側と外側を切断します。
この操作を行わないと術後のツッパリ感の原因となることがあります。大切な操作です。
写真下の剪刃の先端が下横走靭帯を指しています。

 
 
挙筋腱膜を前転させ、眼窩脂肪をWhitnall靭帯まで剥離します。鑷子先端がWhitnall靭帯です。(下の写真は他の患者さまのものを使用しています)

 
 
眼窩隔膜と挙筋腱膜を前転したところです。斜め外側に走行しているのが分かりますか?

 
 
6-0プロリンを用いて挙筋腱膜を瞼板に縫合固定します。3点で固定します。
挙筋腱膜のベクトル方向(やや外側です)に固定するのがポイントです。
 
中央で固定した後、座位になってもらい眼の開きに左右差がないかを確認します。
座位で確認することがとても大切です。手間がかかりますが必要不可欠な操作です。

 
 
手術が終わった直後の写真です。麻酔の影響で腫れていますが、眼がかなり開きました。
眼力が出ました! 最初の写真と見比べてください。
 
眉毛と上眼瞼の距離も縮まりました。機能を改善する手術ですが、整容的にも若々しくなることが多いですね。また、この方は手術を受けて頭の重さが完全になくなり、肩こりは半分以下にまで減少しました。このように頭痛、肩こりが改善される方が多いのも驚きです。

 
 
院長ブログに載ることを快く了解してくれた患者さま、ありがとうございます。
手術を受けた方の表情が明るくなり、やってよかったと言われる瞬間が最高です!
~
北澤 健
先生へ
私にこの素晴らしい術式をおしみなく教えて下さり、言葉では表現できないくらい感謝しています。先生のように一例ずつ丁寧に魂を込めて執刀していきたいです。


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